いやぁ、昨晩は堪能しました。ラトルのカルミナ・ブラーナ。
この方がこの曲を(というか、合唱曲を)振るイメージがあまりなかったので、事前の注目ポイントはこんなところでした。 1.ラトルの指揮振りっぷり。特に対合唱団。 2.ドイツ人の名合唱団による、カルミナのラテン語&中高ドイツ語発音 3.ドイツ人が考える、この曲での児童合唱の使い方 4.ソリスト陣を楽しむ 5.NHKの字幕 さて、結果は如何にか。雑感を並べます。 1.ラトル、合唱団をほとんど意識しない振りっぷり。 大人合唱団はベルリン放送合唱団、児童合唱はベルリン大聖堂少年合唱団でした。 ラトルのあの動きであのタイミングで歌えるとは、合唱指揮者が事前に相当練ったと見ました。いや、ドイツの一流どころにはおなじみの曲なだけ、かもしれませんが。 1曲目、O Fortuna「おお、運命の女神よ」でおなじみのイントロが終わり、ppが続くところ、あれだけの動きしかしてないのにテンポが乱れないのは流石。しろーとでは駄目駄目でしょう。 2.ドイツ人の発音、しかと頭に焼き付けました。 第1部の控えめなところでは判りにくかったですが、ラテン語の発音はドイツ読みで間違いなく統一されていました。これはおっけー。 中高ドイツ語(要は、中世の古いドイツ語)は綴りに忠実に、ではなく、現代ドイツ語の単語に置き換えてしっかり発音してましたね。 Were diu werlt alle min「もしも世界が全部俺のものなら」で "ih mih" という綴りをはっきり「イッヒ ミッヒ」と歌っていました。 この曲最後の掛け声、"Hei!"も、はっきりと「ハイ!」でしたしね。 3.いや~、大聖堂の聖歌隊で正解! 児童合唱だけをはっきり「いい聖歌隊の少年」から持ってきたことを意識して聴いた演奏の前例がないので大きなことは言えませんが…実にいいです。 Amor volat undique「キューピッドはあちこち飛び回り」で、「若い男が娘さんとくっついちゃうのは当然のこと」とか、(ソプラノの「娘さんが彼もなく、夜ひとりでこもってるなんて」という歌に続き)「それは本当につらいことね」とか、本当に無垢な存在がしれっと言っちゃってる感じが何ともいえません。 なるほど、作曲者の意図はこっち方向か、と初めて納得した出来です。 4.今回の収穫はバリトンの彼! あくまでも、先入観なしに今回の演奏についての評を。(ソリスト名はNHKのHPからコピペ。) ソプラノ: サリー・マシューズ 声質やや太め。メゾソプラノ寄りかしらん。私個人的にこの曲のソプラノは(声質が)細くて張りのある華やかなソプラノ声が似合うと思っているので、ちょっと合わなかった…かなぁ。23曲目Dulcissime「とても愛しい御方」でヴィジュアル的にすごく良かった(カメラワークのお陰あり)のでここで一気に点数上がりましたが。 テノール:ローレンス・ブラウンリー 御存知の方は御存知の通り、この大曲でのテノールの出番は白鳥の歌Olim lacus colueram「僕は昔湖に住んでいた」の1曲のみ。姿勢良く、まじめな歌い方で、「首の長さは白鳥だが、首はまっすぐ硬直」の感じ。まぁ、焼けてるのでそれもありなんですが。 しかし、丸焼きの白鳥に対して「かわいそうに、今は焼かれて真っ黒だ」とはやし立てる歌で、ソリスト(はやし立てられる側)に黒人歌手を使うのって、どうなんでしょ。ある意味ものすごくブラックです。 バリトン: クリスティアン・ゲーハーハー いやぁ、この方の歌うさまには惚れました。この曲中のバリトンの出番には、純愛の歌、自暴自棄の歌、賭け事大好きな酔っ払いの歌、今にも意中の彼女を襲いそうな歌、といろいろあるのですが、美しい曲をそつなくこなした上で、毒を含む曲には単語単語の持つ毒をしっかり具体的に表現し切っていました。素晴らしい。 この方のEgo sum Abbas Cucaniensis「俺は遊び人修道院の院長様だ」なぞは永久保存版です。日本人-生にしても、DVDにしても、ここまでこの曲を「演じている」方を観たことがこれまでありません。 個人的には、テノール:高橋淳 バリトン:この方 で生で演奏観たいです。 5.先述の通り、NHKは字幕なし…も、充分笑えました。 NHKの言い訳は、「生放送なので字幕なしでお送りしました、後日字幕付で再放送します」だったのですが…。 実は第1部、2部、3部のタイトル、曲のタイトルは、ちゃんと日本語訳で表示されていたのです。曲の最初の1行~2行分を、正確に口語訳直訳。 しかぁし、「もしも全世界が私のものだったとしても、私は敢えてそれを捨て去るだろう」って何の歌かわからんぞ。 そしてもっと笑ったのが、「もしも若者と若い娘とが小部屋にいたら幸せ」というタイトル。 なぜ、最初の1文から、最後の1単語だけを外して訳するのだ!文法的に間違ってます! ………直接的な表現にしないための誤魔化し以外の何者でもないんですけどね。 最後に、アンコールはヘンデルのメサイヤから、ハレルヤコーラス。 アンコールするならカルミナから派手めな小曲を行くかと思っていたので、嬉しいサービスです。 ところで、私のドイツ語聞き取り能力が足りないだけなんですけど、ラトルが「カルミナではなく有名なヘンデルのハレルヤコーラスにする」理由として"vielen Menschen"という言葉を多用していたのですが、詳細がわかりませんでした。 「カルミナは大編成で大変だ」と言っていたのか、「カルミナは皆にあまり知られてないので」だったのか………。 #ワカルカタオシエテクダサイ
by cantotanto
| 2005-01-02 01:39
| 合唱曲
|
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