曲の勉強と本番の宣伝を兼ねて、ロイド=ウェッバーのレクイエムの歌詞をいろいろアナリゼ(もどき)していたのですが、いかんせん記事にしている時間がなさすぎる…
語り過ぎない程度に小出しに書いていきます…例によって本番直前までやりそうですが。 さて、バリバリのミュージカル作曲家、ロイド=ウェッバーが1980年代に書いたこのレクイエム、レクイエムの典礼どおりのテキスト(昇階唱なし、続唱(Dies irae)あり、ミサ後のLibera meあり、In Paradisumなし)しか素材に使っていないのに、何だか普通のレクイエムっぽくない印象があったのは…テキストの順番入れ替えや再出を割と自由にやってるからでした。 年代的に「レクイエム」という儀式が正式なミサから外された後ですし、そもそも作曲者はカトリックのお国の出身ではないので、本当に「自由に」扱っています。 でも、合唱歌ってる時の印象からは意外な位、テキストのカット箇所は少ないんです。たぶんフォーレより真面目に使っています(苦笑) Dies iraeの長い長い詩を使った一連の曲の中で、本来の箇所以外に"Dies irae, dies illa"の節を繰り返し挿入する、何ていうのはヴェルディあたりも普通にやっていますが、ロイド=ウェッバーがしつこいのは、典礼上全然違う位置づけにある曲からも、平気でテキストを呼び戻して組み合わせてるところ。 で、その呼び戻し回数を見ると、ロイド=ウェッバーがこの曲で一番訴えたいテキストは、詩編に由来する Exaudi orationem meam, 私の祈りを聞きたまえ、 ad te omnis caro veniet. 肉なる者は皆主へ向かうだろう。 の一文でしょう。特に前半のExaudi~は全部で4箇所に登場しています。 出てくる箇所は、 ①本来の、”Te decet hymnus~"の次。 ↑はBoy Soprano(Trebleとは言わないのね。英語圏でもセンモンヨウゴなのかも)soli→ソプラノパートソロで繰り返されるので、混声合唱の最初の歌詞になります。 ②Kyrieに入る直前。 ”Requiem aeternam~"のテキストでひとしきり盛り上がった後で、”Exaudi orationem meam"だけが強く繰り返されます。 ③Hosannaの最後、Pie Jesuに入る前。 ここは完全にオリジナル召還。本来のテキストにはありません。 っていうか、ノリノリゴスペル調のHosannaが終わった後に、ソプラノソロが "Dies irae, dies illa, Solvet saeclum in favilla, Teste David cum Sybilla." ←Dies irae冒頭の節 をなぜか”Recordare"の節で歌い、その後合唱が①と全く同じ"Exaudi~"を演るというつなげ方は、完全にロイド=ウェッバーさんのオリジナルの組み合わせでしょう。 ④Libera meのテキストをテノールソロがひとしきり歌った後。 これもオリジナル展開です。 どうやら、「終わりの日」の恐ろしさに臨んで、混声合唱が「私の祈りを聞いてくれ」と訴える形を作りたかった模様です。 しかも特徴的なのは、混沌とした音楽の中で皆に叫ばせる②(この曲最初のヤマ場)以外では、低音弱音変な和音でおずおずと、ややオカルトチックに「…私の祈りを聞いてくれ…」と言わせてること。 さらに"Ad Te~"の節は最初きれいな和音を見せておいて最後の"veniet"で疑問符がいくつも浮かぶような不思議な不協和音で終わるので、「肉なる者は皆主へ向か…える…の??」ってな感じで猜疑心満載。 訴えないと聞き入れられないかも、という恐れ。従来の信仰の枠の中に本当に救いがあるのか見えない不安。 「現代音楽らしさ」という指標とはまた別に、実に「現代的」ではないですか! 何となく「変な展開だな~」って思ってたあたりに、実は一本線が通ってそうで、このレクイエム、結構奥が深そうです。 …って、本番2週間前に気付いているようでは遅いし、今頃記事にしてるのも遅いんですけどね(恥)
by cantotanto
| 2008-06-05 21:44
| 外国語曲のことばのこと
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