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壮大なる現地モノ! プッチーニ:トゥーランドット
オペラって、どういう訳だか作曲者や依頼者から遠く離れた時代や場所での出来事を描いた作品が多い。エチオピアを征服したエジプトの話やパリの高級娼婦が結核に罹った話や極めつけは幕末(明治入ってたっけ?)の長崎に来たアメリカ軍人に嫁いだお妾さんの話なんかをイタリア人が書いたり、スペインでジプシー娘に惚れた男の話をフランス人が書いたり、とにかく節操がない。(どれが何の話か気になる方はMoreへ…)
#何で長崎のアメリカ人がイタリア語で歌わなあかん、と突っ込みたくなることしきり…。

まぁ、現代我々が目にする映画だドラマだも、中つ国の伝説だったり、宇宙のサーガだったり、キリストの受難だったり、アーサー王伝説だったり、新撰組だったりする訳で、「今ここではないどこか」の作品を観客が求めるのは同じなんでしょうけどね。

世界が狭くなった昨今、こういうオペラには往々にして「現地モノ」という企画が持ち上がります。しかもそういう企画は「せっかく現地でやるんだから…」とどんどん派手になりがちです。
ヴェルディ没後100年にあたった2001年には、イタリアの放送協会が、「パリの町並みから(舞台ではない)ドラマ仕立ての椿姫を世界同時生中継(舞台転換も移動を伴い大変だから、第1幕は午前中で、終幕は夜になっていた…)」というかなり無謀な(でも出来は非常に良かった…鏡の間でちらりとカメラマンさん映っちゃった以外は…)番組を作ってました。
#NHKで1回放送(勿論生ではない)したっきりだと思うのですが…どこかでDVD出てませんかねぇ…。

さて、前置きが非常に長くなりましたが、プッチーニのトゥーランドット。舞台は中国、北京の王宮です。これを指揮者ズービン・メータと中国の映画監督チャン・イー・モウ(後に「英雄 ~HERO~ 」を作る人ね)ががつっと手を組んで、現地モノを北京は紫禁城前広場に作った特設ステージで上演しちゃったのが1998年のこと。恐ろしいことに、これが中国でのトゥーランドット初演だったんですって。

で、内容はと言いますと、とにかく派手。フィレンツェから連れて行ったオーケストラも、ヨーロッパから集められたソリスト陣も、屋外ステージ録音ならではの音響マジックで(ディスク内での仕上がりは)まぁまぁ良い音…になってるのですが、派手なのは音じゃない。映像の方。
衣装が派手派手、エキストラの数が派手派手、京劇風の踊りが派手派手、そして、本物の紫禁城に溶け込みきっちゃった舞台そのものも派手派手。衣装も舞台も人海戦術で作られていて、エキストラには衛兵役にそのまんま本当の軍隊を呼んで来れちゃう。メイキング映像を見ていると、当時の中国の際立った人件費の安さをまざまざと見せ付けられる感じです。
ちゃんと明朝の頃の伝統に則った衣装に、凝った(?)東洋人メイク。出演者全てがちゃんと中国人に見えてくるから不思議です。
映像中心のディスクとして、お楽しみいただけるのでは、の一品です。
#ところどころにマルチアングルカメラ機能が付いた箇所があるんだけど…おらがクルマの中でもちゃんと動かせました(7/27訂正。でも2パターン切り替えしか確認できず…)。

演奏も良いんですよ。タイトルロールでお姫様のトゥーランドットと、女奴隷だけどもっと美味しい役回りのリュウ、どちらも甲乙付け難い熱唱(姫の場合は熱持っちゃいけないのだが)です。あと、特筆すべきはピン・ポン・パンの3大臣。動きと衣装も含め、いい味出してます。


<DISK情報(DVD)>
Turandot
/ Bmg/Rca Duplicate Numbers
スコア選択: ★★★★★

これが中国初演となった1998年の紫禁城ライブ。現地モノならでは(?)のふんだんな金遣いと人件費の安さで、想像を絶する豪華な舞台を実現。マルチアングルカメラをいじれる(と言っても2パターン切り替え)パートあり。

プッチーニ(1858-1924):歌劇「トゥーランドット」全曲

配役 トゥーランドット ジョヴァンナ・カゾッラ(Sop.)
    アルトゥム皇帝 アルド・ボッティオン(Ten.)
    ティムール   カルロ・コロンバーラ(Bass)
    カラフ(匿名の皇子) セルゲイ・ラーリン(Ten.)
    リュウ      バルバラ・フリットーリ(Sop.)
    ピン  ホセ・ファルディーリャ(Bar.)
    パン  フランチェスコ・ピッコーリ(Ten.)
    ポン  カルロ・アレマーノ(ten.)    etc.etc.…
フィレンツェ五月音楽祭合唱団&管弦楽団
指揮:ズービン・メータ
演出:チャン・イー・モウ
撮影:1998年9月、北京、紫禁城におけるライブ




[どうでもよい答えあわせ] 超有名どころですが念のため…。

エチオピアを征服したエジプトの話…ヴェルディ:アイーダ
パリの高級娼婦が結核に罹った話…ヴェルディ:椿姫(ラ・トラヴィアータ)
幕末(明治?)の長崎に来たアメリカ軍人に嫁いだお妾さんの話…プッチーニ:蝶々夫人(マダマ・バタフライ)
スペインでジプシー娘に惚れた男の話…ビゼー:カルメン

さらに…

中つ国の伝説…トールキン「指輪物語」→ロード・オブ・ザ・リング
宇宙のサーガ…本来は3部×3作構成だったはずの スターウォーズ シリーズ
キリストの受難…パッション(・オブ・ザ・クライスト) (まんまやねん)
アーサー王伝説…キング・アーサー (本っ当にまんまやねん)
新撰組…今年のNHKの広告塔(と書いてタイガドラマと読む)
by cantotanto | 2004-07-27 01:44 | オペラ
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