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ヤマなし、オチなし、イミは(きっと)大いにある曲
近況もあんまり報告しておりませんでしたが、来週末にまた一つトシを取ります。
で、誕生日の週末土日を両方とも本番で埋めるという贅沢(…いや、暴挙だな)を予定しております。

当日な日曜日のほうは縁あってハイドンの「四季 Die Jahreszeiten」をお手伝いさせていただくことに。
急遽お邪魔の身でありながら、かなり好き放題させていただいてます。すみません。

今年は没後200年のメモリアルイヤーなハイドン、これまではあまり縁がなかったのですが、今年のはじめに「天地創造」を初めてナマで(+歌詞対訳付で)じっくり聴きまして、なるほどこれが「音楽の父」の音楽かとある意味感心していたところでございました。

[プチ解説] ハイドンの「天地創造」
ソリスト3人にはS:ガブリエル、T:ウリエル、B:ラファエルと天使の名前がついていまして、彼らが創世記冒頭の「神が天地創造をした7日間のいろんな御業」を語り、合唱隊が万歳万歳と神をたたえる造りの曲(極論)。底本は創世記…だと思っていたら、創造されたものを描写する生き生きとしたアリアを含め、ミルトンの「失楽園」をベースにした英語台本をパトロンの某男爵(後述)が独訳してテキストを選んでいた模様です。


で、今回はその後に作曲されたオラトリオ「四季」。
こちらも当時の「イナカの民衆の1年間」を描いた英文の叙事詩を翻訳しつつ、「天地創造」でもご活躍のパトロン、ヴァン・スヴィーテン男爵がテキストを作った…ということなのですが、これ
・実は歌詞が全然韻文じゃない(英文からの翻訳なので仕方ないけど、歌いにくいかも…)
・元の詩にいない人物を3人作ってソリストに充ててみた
・なんか、時々ちっとも詩的じゃない文があったりする
点で、かなり男爵の創作が入っている模様です(いや、芸術に非常に理解があり、音楽の才能もあるパトロン様なのですが)。

何でも、「『自然は我らの勤勉さに報いてくれた』なんていう詩的じゃない歌詞(←秋の収穫シーズン用)でフーガなんか書けるほど俺は勤勉じゃない」ってハイドンがキレたとかキレてないとかいう逸話付きだそうでして…(苦笑)

「天地創造」と同じようにソリストには役名がありまして、S:ハンネ、T:ルーカス、B:シモン(ズィモン?)…なんだけど、名前の出典はどこにもなし。ハンネが農夫シモンの娘、という設定があるそうなのですが、父娘の会話(?)は特になし。
しかも、春→夏と何もなかったところで、突然秋にハンネとルーカスの「愛の二重唱」勃発でびっくり。
その割にその後冬まで行っても、何かが発展した様子は全くなし。もちろんルーカス→シモンの「お父さん、ハンネさんを僕にください」も逆の「お前にお父さんと呼ばれる筋合いはないっ」も全くなし。そもそも、シモンは歌詞の中で名前を呼ばれることすらありません(苦笑)。
ただ淡々と、季節が一巡り、回って行きます。
いやはや、ストーリーにオチなしとは。びっくりです。(季節ごとの場面の流れはかなり面白いんですけどね)

そうそう、びっくりといえば、農夫シモンは畑に種を蒔きながら当時すでに有名だった「驚愕」交響曲の主題を口ずさんだりしていてなかなか上手いつかみを取ります。
また、歌詞の内容から、銃を使った狩り(ちなみにティンパニの銃声が鳴るのは秋の鳥撃ちのバスアリア)があったり高級品として「金の時計」なんてのが出てきたりして、宗教曲じゃわからない「時代感」が感じられて面白いものです。

自然の描写も「天地創造」以上に気合が入っていまして(この擬態音、擬音音(??)へのこだわりも男爵指示のもよう)、跳ねる子羊、飛び回る蜜蜂の群れ@春、日の出の前に鳴き始める雄鶏、ゲリラ豪雨(!)、お腹がいっぱいになったらちょっとふてぶてしい牛の群れ、午後6時の「夕べの鐘」(ソリストが現在形で「鳴ってる」って言うときには鐘が鳴り、合唱が現在完了形で「鳴った」って言うときにはもう鳴らない芸の細かさ!)@夏などなど、楽しい音がいろいろ入っています。

ちなみに夏の明け方から羊飼いが山に出る話に続く、太陽本体がじりじりと上がっていく描写に始まる太陽賛歌は、「日の出を描いた音楽」としては最高の完成度なんじゃないかと思っております。
#ダンナに言ったら「なんだその音楽ジャンルは」とツッコまれましたw
太陽の上の端がじわじわと出だしてからすっぽり地上に抜けるまで2分間(本当)、ちょうどいい具合で盛り上がります。


で、1年の節目節目に~~は神のおかげね、と賛歌を歌ってるだけなのか、と思っていると、最後の冬が実は凄く深く。「また暖かくなると第1部同様に花が咲く春が来るね~」ではなく、「この『厳しい冬の人生』を抜けて、いつか『永遠の春』に至るのだ」と一気に宗教的に高尚なところへぐぐっと主題が持ち上げられます。「民衆の暮らし」を題材にしたこの曲をちゃんと「オラトリオ」として意味づけるところはこのテーマと壮大な音楽が上手くまとめてるんじゃないかな、と思う次第です。

追伸1:東京某所でのこちらの演奏会、興味のある方はコメント等でお問い合わせください。ご招待可能です。
追伸2:タイトルは某オタク系用語の語源のもじりです。他意はあんまりありません。
by cantotanto | 2009-08-17 01:09 | 合唱曲
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