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「後ろから訳せ」とは言われますが…
ただ今、来月のヴェルレク本番プログラム用に対訳小悩み中。
いや、前回も同じ団体でレクイエム(デュリュフレ)だったんだから使いまわし可じゃん!と思っていたら、立ちはだかる長大な「Dies irae(怒りの日)」のテキストにtremorっています…。

昔々、中学校の英語の先生に「後ろから訳せ」と言われていたこと(*)は往々にしてラテン語にもあてはまりまして、極端な例だと以前カルミナ・ブラーナぶっちゃけ意訳でこんな感じで使いました。
(*余談:きれいな訳文を作るには有効ですが、今は必ずしも英語勉強法として推奨されてないようでして。例文は面倒くさくて出しません、ごめんなさい)

Gloriantur
et letantur
in melle dulcedinis.
qui conantur,
ut utantur
premio Cupidinis;

  クピド(キューピッド)のご利益を
  いただきたいもんだと
  たくらむ奴は、
  甘い歓喜の蜜の中で
  自信満々になって
  楽しいことをしてみよう。

最後の行から、ほぼ順番に訳しております。流石に本番用は3行ずつで切って倒置にしましたが。

団員用に逐語訳も添えていて、補助として意味の通る日本語の訳文を載せたい時には、対訳の行数を揃えつつも、こんな感じで自由に行を渡った訳を作っております。


で、今回悩んだのがすでに団員用に配っているコレ↓

Dies iræ, dies illa,
solvet sæclum in favilla,
teste David cum Sybilla.

  ダビデ王と巫女シビラの預言の通り、
  この世が焼き尽くされて灰になる
  その日こそ、怒りの日。

日本語として読むなら「英語のセンセイの言っていた通り」に後ろの行から訳すこの形が正解、だと思うのですが…。
さらっとテキストが流れるケルビーニやせめてモーツァルトのレクイエムまではこれで許されそうではあるのですが、"Dies iræ, dies illa"部分をハデに扱い、しかも曲中何度もこの部分を出してきているヴェルディさんだと、「ダビデ始まり」はやはり問題だと思いまして。

今回、まじめな行対応の対訳とすべく、

  その日こそ、怒りの日。
  この世は焼き尽くされて灰となる。
  ダビデ王と巫女シビラの預言の通りに。

と倒置してみました。
うん。これで行ってみよう。

モンダイなのは一事が万事こんな感じで考えなきゃいけないテキストが3行×18連あることでございましてorz
苦労を楽しみたいと思っておりますです、はい。
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by cantotanto | 2011-05-20 12:59 | 外国語曲のことばのこと
復興の「熱狂の日」レポート
震災の後のマーラー交響曲第2番「復活」訳の後、長らく潜伏しておりました、cantotantoです。

本当は聖週間の後にマーラー交響曲3番の「ペテロの罪は許された」のテーマでお送りしようと思っていたのですが、タイミング逸してしまったのでこれはそのうちに。
#今年の夏にマーラーの3番を歌って遂に彼の合唱曲をコンプリートのはずが、何と会場があのミューザだったために予定は白紙となってしまいました…ここにも震災の影響が。

さて、同じく一部会場への影響&アーティスト来日キャンセルのあおりを受けて仕切り直しとなった「熱狂の日」ことラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン(以下LFJ)。今年のテーマは「タイタンたち Les Titans」。
Titanといえば2010~2011年が記念イヤーなマーラーの交響曲第1番!なのですが、ここではドイツ後期ロマン派の作曲家をぐわっとごった煮にしたイベントとなっております。

実は震災前後は「なんとなく」落ち着かなくてLFJのチケットを取らないままだったのですが、仕切り直しの発売日の10時にパチッとWeb発注できてしまったために、今年は初めての小部屋鑑賞が叶いました。

[本日のその1]G-17a
 ハンス・イェルク・マンメル(テノール) 
三ッ石潤司(ピアノ)
 マーラー:さすらう若人の歌
 マーラー:リュッケルトの詩による歌曲集 他

G(ガラス棟、のGか)409という、行ってみたら本当に会議室にイスを並べただけ、の部屋、153席。
歌詞対訳をもらってびっくり。チケット販売時点で「他」と書かれていた作品は「シューマン:詩人の恋 Dichterliebe」の、もちろん全曲演奏でした。何という大盤振る舞い!(ちなみに45分間の予定がたっぷり1時間かかっていて、直後のプログラムのチケットを持っている方は大変そうでしたw)

テノールが歌う「さすらう若人」は高声用に移調かと思いきや、メゾ/バリトンが歌う時と同じ原調のまま。若く、軽い声のテノールの方なのですが、低い音も出せるのでそのまま行った、という感じです。(Gucci兄が投げてしまいそうな、Cより下の音がいっぱい出るのですがw)従ってマーラーの2歌曲集とも曲の大半は張った音を出さない音域なのですが、150人のサロンコンサート風ではこれもいい味が出て良かったと思います。むしろ淡々と地の文を歌いあげ、高音域のpが本当に「楽に」出ている演奏を聴くと、これがこの曲の本当の歌い方なんじゃないか(→自分の出番はますます、ない(苦笑))と、目からウロコでございました。
原調を選んだおかげで、さすらう若人2曲目の「交響曲1番1楽章マンマ」の快活なメロディーや、リュッケルトの「私はこの世に捨てられて」の「交響曲5番4楽章の有名なアダージェットに似てる…」という所もわかりやすかったんじゃないでしょうか。

実はマーラーは譜面台の楽譜をめくりながらの演奏だったのですが、その後のDichterliebeは当然のように(苦笑)暗譜で朗々と。時系列では逆なのですが、「Dichterliebeを持ち歌にしているドイツ人のテノールリート歌い」の方が、マーラーの歌曲を歌うとこうなる、という所を並べて聴けた訳で、そういう意味でもこのプログラムは美味しい組み合わせでして。こちらはよりドイツリートらしい、短い曲のたたみかけでメリハリのある曲集ですので、すっかり自分のものにされているいろんな表情をやはりサロン的な距離で楽しめたのは本当によかったです。

そして、特筆すべきは多弁なピアノ!Dichterliebeの終盤あたりでもそうですが、特にマーラーは敢えて歌手を黙らせて(曲に入り込んでると「あれっ、歌手出忘れた?」と思うくらい)ピアノに先行テーマや「空白」を歌わせることが多いのですが…今日の伴奏の方は本当によく歌っていて、マーラーの「ピアノでオーケストレーション」の上手さがとても気持ちよく伝わりました。

…結論。聴いてよかった!演奏家(のはしくれ)目線としても、ひとつの小さな演奏会としても、楽しめました。


[本日のその2]D-15f
ヴォーチェス8(声楽アンサンブル)
ブラームス:われらの父は汝に望む(「祭典と記念の格言」 op.109 より 第1番)
ブラームス:気高き神はいずこ(「祭典と記念の格言」 op.109 より 第3番)
ブラームス:なにゆえに、光が悩み苦しむ人に与えられたのか(「2つのモテット」op.74 より 第1番)
レーガー:アニュス・デイ(「8つの宗教的小品」 op.138 より 第6番)
レーガー:われらみな唯一なる神を信ず(「8つの宗教的小品」 op.138 より 第8番)
ブルックナー:モテット「この場所は神が作り給う」WAB23
ブルックナー:モテット「正しい者の口は知恵を語り」WAB30
ブラームス:強き盾にて武装する人、その城を守らば(「祭典と記念の格言」op.109 より 第2番)

こちらは「横長の小ホール」221席。席数の割に、広く感じました。
Voces8は、LFJ主催者のルネ・マルタン氏がイギリスで発掘してきたという、若い8人組。
ソプラノ2人は女声(おみ足美しく登場!)ですが、ATB×各2は全て男声という、いかにもイギリスらしい構成と響き。音と歌い方の雰囲気も、King's Singersあたりを彷彿とさせます。
女声Sと男声Aを何とか混ぜるために配置にも工夫しているようでした。

最初と最後のブラームスのドッペルの曲はASTBBTSAの配置。そうでない曲はASASTTBBとか、レーガーの5声の曲はSASTBとか、とにかく
・声質に違いがあるSとAをできるだけ「混ざる」ように配置
・Sが分離しないように男声で囲むべく、できるだけステージ表近くにAを配置(指揮振る都合もアリ)
という努力がそこかしこに。Sの中、Aの中でも出てくる場面によって音色を使い分けていた模様です。

ハーモニーのち密さは、イギリス伝統の折り紙つき。ヒトの声で三和音やオクターブを決めるとこんな音がするんだって、LFJの楽器巡りの方にも聞かせたいんですけどねぇ。
ゾクゾクする決まりどころがいっぱいあり、うれしい限りです。

歌ったことのないブラームスのWarum"連呼のモテット(BachっぽいけどBachよりずっと難しいフーガ、魅力です。最後のルター作コラールはBachのカンタータで歌ったことある歌詞でした)やレーガーの曲は、シャイン会あたりでいつか合わせてみたい曲でした。
あと、歌ったことある曲ですが、ブルックナーのLocus isteのバスパートは「バス協奏曲」ばりの大活躍だなぁと、楽しく再認識しましたですw

そうそう、バリトン氏が(おそらくローマ字書きで用意してきた)日本語のご挨拶&曲紹介をいっぱいしゃべって下さいましたが、
「ツギノBrahmsノキョクハ、ユメイナ作曲家、ばっくノアイキョウヲ受ケタモノデス」
ってな感じのご愛敬で、なかなかほほえましかったです。
注:Bachの英語読みは「バック」、ドイツ語曲を歌っていることもあり、影響→eikyou→アイキョウと発音、かと思われます。

拍手がいっぱいあれば、「Sing along=一緒に歌おう」企画も出てくるかと。
ボイパ多用のいわゆる「アカペラ」っぽい曲造りも、実はできる所を見せてもらって、面白かったです。
こんな彼らのコンサートが、明日明後日の1100人ホール分はまだ売り切れていません。
お時間と興味がある方は、是非Webまたはコンビニでポチってお越しください。1つにまとまった素晴らしいアンサンブルが聴けるはずです!
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by cantotanto | 2011-05-04 03:36 | 聴きに行くこと