日本での演奏は幻か? ラター:子供たちのミサ
自分の好みの曲を書く作曲家が今生きていて、今も新しい曲を生み出し続けている…。

日本の合唱曲を中心に歌っている方々には日々肌で感じられる当たり前のことなのかもしれません。(弥彦で歌った日本語曲の半分が2000年以降発表作だったのには本当にびっくりしました。それなのにいろんな方に「お馴染み」と言われてしまう三善先生の「生きる」などは本当に凄いです。)委嘱曲初演をごろごろ経験されている剛の者なお方も、結構いらっしゃるとのでは、と思います。

外国曲をメインに、しかもクラシックばかりを扱う活動をしていると、そんなリアルタイム感を持てる機会はなかなかありません。私にとって初めての、そして現在も本当に好きな「リアルタイムご贔屓作曲家」はジョン・ラター(1945-)です。

今生きている海外の合唱曲作曲家の中で、恐らく最も日本で演奏機会が多く、また恐らく世界で一番合唱譜を売り上げているお方でしょう(Oxford大学出版から良心的な値段で出ているが故に、部数も出るのです。他の楽譜屋さんにも見習ってほしい。一説には、楽譜の印税のみで暮らせる唯一の作曲家、との噂も。)。

その作品の特徴は、「レクイエム」(1985)、「マニフィカート」(1990)といった大曲から3分程度の小曲まで、どんな曲にも現れる「素人が聞いても美しい和音と旋律」。
「お涙頂戴的な美しいメロディ」を書かせたら、右に出るものはいないでしょう。でも、「癒し系」なんて言葉で片付けて欲しくない、深さがあります。いつしか、通はそれを「ラター節」と呼びます。

歌う側から見ると…覚えやすいキャッチーなメロディなのにちょっとだけ現代的、とか、自然な旋律の重なりでできる印象的な和音が譜面を見たら実は難しい構成だった、とか…何というか、ある意味プーランクの対極、というありがたい面もあります。
#でもなぜか、ラターとプーランク、両方好きな合唱人は多いのです。通好み、ってことかなぁ。

…で、ようやっと本ディスクの紹介に突入です。これまでの作品と同様、作曲者の指揮で、作曲者お抱えのケンブリッジ・シンガーズが歌い、作曲者お抱えのレーベルCollegiumから出ています。
タイトル曲の「子供たちのミサ」は、「マニフィカート」以来10年ほど、どちらかというと小品中心だったラターが久々に書いた感のある大曲。ミサの典礼文(ただし、Credoなし)に加え、英語の詩を随所に散りばめるスタイルです。演奏は、混声合唱+児童合唱+Sop,Barのソリスト2人+管弦楽と大編成。
でもね、この内容、この編成で、曲の始まりが子供ユニゾンで英語の詩”Awake my soul,"を元気に歌っちゃうんですよ。1曲目のタイトルはKyrieなのに。しかもこの児童合唱が実にきれい。先述の元気なユニゾンも透き通っているし、曲の途中で子供だけでしっとりとした3部(多分。要譜面確認)合唱をこなしている。この曲、日本国内じゃそうそう演奏できませんよ。こんなハイレベルな子供合唱、普通召還できません。大人合唱との対比になっているので女声転用で誤魔化すわけにもいきませんし。
#作曲者自身、子供たちに児童合唱の醍醐味を味わってもらうために書いた曲、らしい。

その対比される大人合唱、ケンブリッジ・シンガーズも以前の録音より大人っぽい響きになったような気がします。女声の色気が増したような。テノールの存在感が若干薄めなのは従来通りですか。

そして、ソリスト2人。ソプラノとバリトンのソリストが絡む感じは、ブリテンのWedding Anthemにちょっと似ているかな。どこまでも美しい旋律が展開されます。ソロの極めつけはFinale後半でソプラノソロが”Christ,"への祈りを何度も繰り返すところ。「クrrrライスト」の巻き舌も含め、美しいです(ほら、ここはやっぱり巻くんだよ~。巻くほうがきれいなんだよ~。←過去に若干の恨みあり)

本当に親しみやすい「ラター節」満載なのに、編成上日本での演奏がなかなか望めそうにないのが惜しいところ。先生、次は日本の合唱団が定演メイン曲にしたくなるような、「レクイエム」を超える大作をお願いしますです(英語で書かなきゃだめか←そういう問題か??)。

変わった編成で機会があったらやってみたい次点は混声合唱+フルート1本の"Musica Dei donum"(神の贈り物なる音楽よ、という感じでしょうか)。珠玉の小品も満載です。


<Disk紹介(CD)>
Rutter: Mass of the Children COLCD 129
Roderick Williams John Rutter John Rutter Karen Jones Elin Manahan Thomas Joanne Lunn Simon Wall / Collegium
スコア選択: ★★★★★

児童合唱+混声合唱+ソリスト2人の味がそれぞれ上手ぁく活かされた「いかにもラターテイスト」の名曲。しかしその編成ゆえ日本での演奏機会はまずないだろうなぁ…の貴重版。

John Rutter (1945-) ジョン・ラター
Mass of the Children and other sacred music 子供たちのミサ &宗教音楽集
混声合唱:The Cambridge Singers
児童合唱:Catate Youth Choir (director:Michael Kibblewhite)
管弦楽:City of London Sinfonia
Sop. Solo:Joanne Lunn
Bar. Solo:Roderick Williams
指揮:John Rutter(作曲者自演)

録音:the Great Hall if University College School, London, 2003年5月
   Henry Wood Hall, London, 2002年6月
79'00" DDD  Collegium Records 2003

入っている曲
Mass of the Children 子供たちのミサ
  1. Kyrie
2. Gloria
3. Sanctus and Benedictus
4. Agnus Dei
5. Finale (Dona nobis pacem)
Look at the world
To every thing there is a season
Wings of the morning
A Clare Benediction
I will sing with the spirit
Musia Dei donum    無伴奏合唱+フルート(Karen Jones)
I my Best-Beloved's am 無伴奏合唱(Ten.solo:Simon Wall)
Come down, O Love divine 無伴奏二重合唱(Sop.solo:Elin Manahan Thomas)
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by cantotanto | 2004-09-09 02:39 | 合唱曲
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