…ってタイトルからもう次の週末やん。…実は長文(これ↓よりもっと長かったような…)を書きあげ直前にIEのエラーでイチから書きなおしだったのでした。仕切り直し、参ります。
交響曲と宗教曲を器用に書き続けなかったブルックナー。ミサ曲1番~3番(この1年に2回歌ったあのミサ3番!)は40代前半に集中して書かれ、ここから交響曲2~7番が一気に書かれ、大曲Te Deumの初稿(1881年)まで、宗教曲の大曲の作曲は十数年のブランクがあります。その10年後、健康状態が悪くなる中「交響曲第9番(そう、この方も9番で亡くなった方)」を書き始め(1891年)、第3楽章を仕上げていた頃の大学での講義(1894年)で「9番が未完で終わった場合は終楽章の代わりにTe Deumを演奏して欲しい」という「遺言」ともとれる発言があったとのこと。もっとも、ブルックナー自身は1896年亡くなる直前までTe Deumではない「第4楽章」の作曲作業を行っていたので、この世を去る時にはどちらを演奏して欲しいと思っていたのかは永遠の謎、です。 …と、このような前段があって、このような演奏会。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 東京交響楽団第580回定期演奏会@サントリーホール 2010年7月11日 18時開演(休憩なし) ブルックナー:交響曲第9番 ブルックナー:テ・デウム(Te Deum) 第4楽章として演奏 指揮:ユベール・スダーン ソプラノ:澤畑恵美 アルト:小川明子 テノール:高橋 淳 バス:久保和範 合唱:東響コーラス オーケストラ:東京交響楽団 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ じゅんじゅん先生を追いかけたく4列目のチケットを入手し、かつP席で共演する権利を無事に得られたYさん(仮名)に「オンステ決まったら是非っ」とお願いして譲っていただいたチケット。この曲のテノールソロが美味しいことはよ~~~~く存じております。 #そういやジュ○スでこの曲やった時に、人気絶頂期の○織健さんをキャスティングした○HKは凄いと思った記憶が… ##ちなみにその演奏会、運営陣OGとして受付か何かの手伝いしてて観てはいないのです(惜) カ○レの初回練習(17時終了@西新宿)から急いで移動して、無事に開演時刻前にホールに到着。 考えてみればサントリーに来るのは久しぶりだったのですが、 ・せっかく近くの地下鉄駅も増えたのに、駅を出たとことホール正面でどうしても傘が必要なこと ・奥の客席に入るのに座っている人をかき分けるのが大変なこと(列間、狭い?) あたりに、ああ、このホールも微妙に古い部類に入って来たのかなぁと微妙な気持ちに。 席は自分じゃ普段選ばない舞台激近の、上手側。サントリー特有の舞台上の反射板たちを見上げる感じ(たぶんこれがまた良かった!)。 ホール入口の手書き掲示に加えて、場内アナウンスでも「本日はTe Deumを第4楽章として演奏するため、ソリスト入場時の拍手はご遠慮ください」の念押し。こう言われたら9番の「終わり」であるところの第3楽章終了時にも拍手は出せません。1粒で2度効果的なお願いです。 開演までふと周りを見渡すと、そこはかとなくクラヲタ、というかブルヲタっぽい雰囲気の男性が結構多い感じ。前列にやや大柄な方がいらして、指揮台があまり見えないのと、指揮者周りにソリスト席っぽい椅子がなかったのは気になっていたのですが… 演奏が始まると…ええーっ、指揮者のスダーンさんが、前列の大柄の君に重なって手しか見えません。まぁ観客も不動ではありませんから、彼が背もたれに寄り掛かったり、ちょっと下向いたときだけ、スダーンさんの表情がうかがえます。前を見ると、かぶりつきでヴィオラ、その奥にコントラバス。指揮者側に顔を向けた時にコンマス&1stVn…弦しか見えません。一面の弦の海。海の向こうから、管の音が飛んで来ます。ステージ上の反射板のおかげか、ナマ過ぎず溶け込み過ぎずの程良いライブ感の音。見えないけど、いい音です。 …と先に「見えない」話ばかり書いちゃいましたが、弦かぶりつきの絵に慣れてくると、これはこれで普段の「普通の位置」で聴こえない弦の音のタッチがよくわかって心地よく。特に第2楽章で繰り返される冒頭のテーマ、ヴァイオリンとヴィオラで受け渡されるちょっとコケティッシュなピチカートも面白く、その直後の暴力的なff(文字通り寝た子を起こす!)で弓を叩きつける弾き方から普通のarcoに切り替える様子とその音の違いがつぶさにわかる!いやぁ、いいものを間近で聴きました。 そして第3楽章のアダージョ、譜面上だと「ただの音階を畳み掛けているだけ」なはずの弦Tuttiのスケール、特にコントラバスの響きが間近に迫って来て泣けます…。ただの音階なのに…これぞブルックナー。最期までブルックナーだったんだなぁと再認識。いやぁ、いい席で聴きました。 第3楽章が終わっても、それまでの楽章間と同じように緊張感と静寂がふっと解けるだけで、「この演奏がまだ続いている」という雰囲気が客席全体にちゃんと残っています。ここでそっとチューニング(オルガンが入るのでここでチューニングはやはり必要)と、ソリストが入って来たらしい雰囲気…雰囲気!? はい、ソリスト様方はオケの後ろ、合唱団(P席)の前、でした。見えない… が、歌った方にはお馴染の「ドソソドドソソド」が始まると…いやぁ、見える見えないはどうでもよくなりました。 プロのオケが「合唱入りのf」を「オケだけのf」の音量とは変えてくるのは当然としても…。舞台かぶりつき席にして合唱のユニゾンに圧倒されます。ここで思い出しました。 …私この曲暗譜してましたわ。 Te Deumの訳資料も去年作りなおして歌った(モーツァルトでしたが)ところなので訳語も同時通訳のように全部フラッシュバックします。 テキストを伝えようという意気が伝わるきれいなユニゾンの渦に圧倒されながら、ブルックナーらしい転調の嵐(マーラーよりもずっと幾何学的なそれ。ちゃんとC-Durに戻るし)に身を任せておりました。スダーンさんは硬い音階で出来ている譜面を自在に扱い、きっちりキープすべきところは手綱を握りつつ、はっとする変化をあちこちに見せてしなやかな音楽を作られていました。視線も9番の時とは違い、積極的に合唱団に送っています(大柄の君が疲れてきたのか指揮者が見えるタイミングが増えてきまして…)。P席の合唱団はよく見渡せて、座ってる時にはお2人位しか確認できなかったマイミクさん(合唱に5人いらした!)のお顔も皆確認いたしました。 #じゅんじゅん先生だけ、全く見えないという罠…。 web上での感想sでも、プログラム内のスダーンさんの対談でも「宗教曲の中にして非常に官能的で意外」と語られていたテノールソロとヴァイオリンのソロとの絡み…実は十何年も前に書いたはずのミサ3番のEt incarnatus estとそっくりな構成、そっくりな雰囲気(2回目に女声合唱のユニゾンがテノールの後追いをするところまで!)。流石自らの作品を新旧問わず繰り返し繰り返し推敲・改訂していたブルックナーさんです。一貫した世界が後期の作品までどっしり継承されています。 じゅんじゅん先生のテノールソロ、1人美味しい所では本当にドイツオペラのように、わざとらしい位までにはっきりとした子音を立てて飛ばして、はっきりとテキストを伝えられてました。これは(直接にしても舞台上の反響板経由にしても)かなり近い位置で聴いているからそう聴こえたのかもしれません。なるほど、大ホールでの歌い方はこうあればよいのかと納得した次第です(…マネする機会はそうないでしょうが…(大汗))。テノールソロ→4人アンサンブルになる時の声の「引き」度合いも勉強になります。 曲の世界にぐんぐん引きこまれていると、気がつけば最後の歌詞の曲、In te, Domine, speraviの冒頭の四重唱(昔から「ドラクエ風味」だと勝手に思っておりました)に。嫌だ、終わって欲しくないと思いながらソリストの、そしてそこから受け渡される合唱の圧倒的な響きを大事に味わっておりました。 1パートずつが短いnon confundarを受け渡してゆく所まで来ると、ほとんど子供の運動会で応援する親のような気持ちで各パートパートをついつい目で追ってしまいました(周りの迷惑にならないように、極力目だけで…)。うたったことがある曲はこういう時に客観的に聴けなくて困ります(…が贅沢な聴き方でもあるとは思う)。 当然のこと(?)ながら揺るぎないSop1のHigh-Cから収束してゆく(ae-)ternumのドソミドのC-Durのハーモニーもきっちりと締まり、合唱の方が歌っていた時と変わらぬ良い表情で後奏を迎え、スダーンさんの手が、止まる。 余韻ののち、長い静寂。 固唾を飲んで、皆が見守る、緊張感。 指揮者の指先がふっとゆるんで降ろされた瞬間に、初めて拍手とBravoがあふれ出しました。 …うわぁぁぁぁ、なんて素晴らしい聴衆が2000席分も揃ったのでしょう!(前日のN潟遠征ではここでアクシデントありだったと伺って後から余計に噛みしめました) フラインフブラボーどころか、フライングパチも咳払いすらもありませんでしたよ(TへT) 昨年末と今年3月の2回、同じブルックナーのミサ3番を歌った時にも、曲が終わった後、聴衆を含めた全員によって作り出された静寂に感動したのですが、「いかにも終わりだいかにも終わりだジャンっ」の強奏で終わる曲でこれですよ!(方や、「え、ここで終わりなの?」的あっさり感で終わる曲なので…) 東京でブルックナーの演奏会、といって集まる方々は、本当に彼の音楽が好きな人たちなのだなぁ、と思うと同時に、これはやはり作曲者の力の賜物でもあるのだろうと感じ入りました。もちろん指揮者が作らないと出来ない「間」でもあります。 何度も出入りを繰り返してのごあいさつで、初めてソリスト陣のお姿を拝見し(正面ではないですが近かったですよ~>Yさん)、そして指揮者の紹介で初めて…管楽器の姿を見ました。これは自分でも驚きました。見えてないの忘れてたもん…。へ、ホルンの半分がワグネルホルン持ち替えありだったの、とか、ここで初めて視認(苦笑)。合唱団はお行儀がよいのだろうな、と想像していたら、合唱団を含まない人たちへの拍手はごく自然に出し、合唱団を含む時はすっと胸を張って拍手を受ける側へと、全体が間違えることなく動きます。いい意味で本当にお行儀が良いです。これは見習いたいところ。 TSCさんはいつもこんなに「凄い」演奏会に立ち会われているのか、と驚いていたら、どうやら団員さん方の間でもこの日の演奏会は聴衆の作る静寂も含めて特別なものだった模様。初めて生で聴きに行った東響&TSCの演奏会で、本当にいい演奏を聴かせていただきました(感涙)。昔から「いつか(当たって砕けろで)参加してみたい合唱虎の穴」と思っているのですが、実力以前に今の場所で仕事しているうちはムリ…平日夜早い時間に県境3本越えてコンスタントに通う自信はないです…(白旗)。 とにもかくにも、関係者の皆様、(先週末は)本当にお疲れ様でした~&ありがとうございました!
by cantotanto
| 2010-07-17 02:09
| 聴きに行くこと
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