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フェルディナンドは、こんな話でした。
<やすおんでご一緒した皆さま(特にヴァイオリンのけんいちろうさんとシャイン会の皆さん)、お疲れ様でした~。ご挨拶遅れて申し訳ありません。本番御礼記事より先に、前談だけ先にリリースです。>

先の生地でネタバレを避けながら宣伝した「やすおん」でのFerdinand the Bull(拙訳日本語版)、無事に終演しましたので曲解説を取混ぜながらレポートを…と思ったらあまりの長さに曲解説を分けました(大苦笑)

原作はこちら(1936年初版とのこと)、

The Story of Ferdinand (Picture Puffins)

Munro Leaf / Puffin



日本では岩波書店からこんなタイトルで出ています。(1954年出版、去年買ったら第56刷でした!)

はなのすきなうし (岩波の子どもの本 (11))

マンロー・リーフ / 岩波書店



つまり、お話の主人公のFerdinand君は雄牛(Bull)で、「はなのすき」な牛らしいことがこのタイトルsだけでネタバレです。(ちなみに日本の絵本では「ふぇるじなんど」と表記されています)
牛が主人公であることは大前提ですが、未読の聴衆に「はながすき」なことが主題だとバラしたくはなかったので、タイトルは「雄牛のフェルディナンド」としてプログラムに載せていただいた次第です。闘牛となるべく育成される牛たちが登場する、スペイン風味たっぷりの作品ですが、原作はアメリカで発表された英語の作品です。お話の始めは"Once upon a time in Spain,"ってな具合です。

<もうネタバレしてもいいつもりで、ざっくりあらすじ>
闘牛を目指す活発な子牛たちの中で、ひとり木陰に座ってお花のにおいをかぐのが好きなフェルディナンド。お母さん(牛)も「どうして他の子みたいに(*1)遊ばないの?」と心配しますが、「お花のにおいをかぐ方が好き」と言うフェルディナンドを好きなようにさせてくれました。
大きく立派な雄牛になってもお花のにおいをかぐのが好きなフェルディナンド。闘牛になりたい他の牛たちから離れていつもの木陰に行こうとしてたのに、ひょんなハプニング(*2)がもとでスカウトの目に留まり、マドリッドの闘牛場でマタドールと対戦する羽目に。
堂々たる闘牛士団の入場(*3)の後、闘牛場に現れた「素」のフェルディナンドは、見物のご婦人方の髪飾りの花(*4)を見つけて座り込み、じっとお花のにおいをかいでいました。皆がけしかけてもフェルディナンドは闘わず(*5)、闘牛の興業は台無し、お里の牧場に帰されたフェルディナンドはお気に入りの木陰で今もお花のにおいをかいで幸せです(*6)

今回演ったのは、原作から少し描写の記載が減らされた(たとえば、闘牛士の構えている武器の種類と目的とか削除)Ridoutの楽譜記載の文から、日本語のテンポが良くなるように少しいじって、いかにも童話らしく訳した拙訳版。何せフェルディナンドのテーマはしゃべりと交互に動く(もちろんVn奏者さまがしゃべりを待って下さる訳ですが)のであんまりだらだらしゃべっても興ざめです。

で、拙訳での反省点と遊びポイントと、この童話の趣旨について、ちょっと注解説。

*1:ここは後で反省。お母さんは「うちの子はよその子と違う」ことよりも「うちの子は仲間はずれでさみしいんじゃないか」と心配していた色が強いので(だから安心したらものわかりよく好きなことさせてくれた)、「他の子と一緒に」が正解でした…。シンプルに削る時の訳語選択って難しいorz

*2:これ、「スカウトの人が来ている時にハチに刺されて暴れる」なのですが、Ridoutの楽譜では「ハチが刺した」とは一言も言ってません。「フェルディナンドが座ろうとした所にハチがいた。もしも皆さんがハチで、牛のお尻が降りてきたらどうしますか?(原作通り)」→ヴァイオリンがピャッと鋭く和音を弾く→語りが叫ぶ!だったのですが、状況、わかりましたですよね…?(今さら心配)

*3:ここでは、原作では多くの階級の闘牛士と多くの武器が出て来て、「これを使って牛を怒らせます」「これで牛にとどめを刺します」という記述がしつこくあります。子供のころにこの話読んだ/アニメ等を観た、という方には牛がブスブス刺されるシーンのイメージが残ってる方が結構いらして、「フェルディナンドが死んじゃう話」と記憶していたという話も聞きました。少なくとも日本の子供には刺激が強そうです。Ridoutの曲では”Banderilleros""Picadores""Matador"という階級名だけが書いてあるので頭をしばしひねった後、メジャーそうな「マタドール」だけ残して後は勝手に横綱土俵入り風にしてしまいましたw

*4:この伏線のために、ショートヘアなのに強引に大きな花の髪飾りを付けて出たという訳で。

*5:「闘牛なのに闘わない」牛は原作&曲ではコミカルかつ牧歌的にさらっと描かれていますが、ここで「牛をあおる」ために赤マント以外の武器の数々が使われます。映像作品とかで怖い印象が残るのはこの辺かしらん。原作発表当時スペインで内戦が起きていたことへの反戦的メッセージの意味があるのでは、と勘ぐられたりもしていたそうですが、作者は「いい趣味」「個性」をのばすこともいいことだよ、と言ってるだけだと発言したこともあったとか。…反戦にしても、「いい趣味もいいじゃん」にしても、これが太平洋戦争よりも前のアメリカでふつうに出版され、読まれていたといのはある意味驚愕でした(もちろん日本で出版されたのは戦後です)。

*6:ここは原作に倣って、「幸せです!」と現在形で終わらせました。「昔々」で始まっているから、お話の時制としてはあれっ、という変化なのですが。日本語の絵本では「座っています…幸せでした。」が採られています。闘牛で使い物にならなかった牛にハッピーエンドがあり得ない(使い物になった牛にもありえない)のは職業柄重々承知ではありますが(そして雄牛がいっぱいいる牧場は超キケンだってことも想像しちゃいますが)、
ここは童話として、フェルディナンドが幸せで本当に良かったな、と思いながら語らせていただきました。

曲の筋でこんなに語れてしまった(汗)
この記事冒頭の絵本の表紙のイメージで、「フェルディナンド2段変形楽譜カバー」を前日夜なべで作ってしまいました。こんなのです↓
フェルディナンドは、こんな話でした。_a0036057_2382797.jpgお話前半で使用した、「子牛のシルエット」な楽譜カバー。背景はこの記事冒頭の絵本のイメージで、花柄の赤い布を貼りました。子牛の背中に黒マジックテープが貼ってありまして…

フェルディナンドは、こんな話でした。_a0036057_2403100.jpgで、「何年か経ってフェルディナンドは大きくて立派な牛に…と言いながら「雄牛のシルエット」を貼りつけるとこんな感じに。
リアル観客の方の「わかる人にはわかった」ようでしたので一安心でした。
by cantotanto | 2011-01-26 02:45 | 語り系&冗談クラシック
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