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奇跡の快演(or 怪演)、フェルディナンド顛末。
御挨拶が遅くなりました。先週の土曜日、1/22は「やすおん」本番でした。出演者の皆様、聴衆の皆様、本当にお疲れ様でした。
「One of the members of シャイン会」としてしか関わっていなかった(その中で「酒をよく飲むヤツ(by Hでさん)」という認識はされていたようです…)「やすおん」で、あんなにハデなデビューを飾らせていただいたのは自分でもびっくりでした。共演者のけんいちろうさん、主催者のまみーごさんご夫妻、スペイン一色な衣装を快くお貸しくださったまりぴーさん、いろいろお手伝いいただきましたか~のさんはじめシャイン会の方々、本当にありがとうございました。
例によって長文ですが、語りを演らせていただいた「雄牛のフェルディナンド」の曲についてと当日の演奏について、つれづれ語らせていただきます。

演奏したのはコレ↓に収録の Alan Ridout作曲、フェルディナンド(Ferdinand the Bull)。
というか、このCD以外の音源を知りません(苦笑。ようつべにはライブモノが少し、ありました)

サン=サーンス:動物の謝肉祭

アルゲリッチ(マルタ) / ユニバーサル ミュージック クラシック


このCD、動物の謝肉祭は当然合奏(ちなみにこのCDの「ピアニスト」の壊れっぷりは秀逸www)ですが、その他に入っているのが
・ヴァイオリン+語りの「フェルディナンド」(英語)
・ピアノ+語りの「動物の祈り」(ドイツ語)
・コントラバス(英語表記でDouble Bass)+語りの「小さな寂しい音」(英語)
という楽しい語り小品の数々。穴があくほど(CDなのであきませんが)聴きこんで、リスニングの教材よろしくだんだん話を理解していった楽しいお話たちです。フェルディナンド(というかふぇるじなんどというか)のお話についてはこちらでご紹介(終演後記事。楽譜カバー必見!?)させていただいております。

特にフェルディナンドはコンパクトでかわいいお話、ヴァイオリン1本で和音を奏でるとこんなに闘牛チックでワイルドな音が鳴るのか!という驚き、そして語りの見せ場の多彩さを気に入って(まぁ、叫んだり、とかですわ)憧れてはいたのですが…このCDを聴きこんでから10年間位、「語り付き音楽を10分かけて演らせてくれる場」も、それ以前に必須要件な「こんなワイルドな曲をソロで弾く腕と度胸のあるヴァイオリン弾き」にも心当たりがないまま、まぁこのジャンルを実演できる機会はないものだと思っておりました。

…が、「やすおん」の常連さんのお顔をだんだん覚えてきた頃に、ふとしたところからフェルディナンドの楽譜が出版されていて日本から取り寄せ可能(今は定番?)(さらに役者さんによる語りの動画(激重)の紹介記事まで追加されてる!)ってことに気付いてしまったのが一昨年だったか。譜面を見て火が点きなおしまして…これはこの人しかいない!と「やすおん一華のあるヴァイオリニスト」けんいちろうさんに話を振って一本釣り@昨年の冬やすおん打ち上げ2軒目(しかもその日譜面忘れてきて…ある意味サギです) ごろごろと巻き込んでしまった次第です。だって、真っ青なシャツとか、真っ白な上下とかで東京建物八重洲ホールの後ろのドアから登場した「だけ」で拍手とウケが取れ、そのまま1人でピアノでもヴァイオリンでもハデな曲を弾ける上にコミカルなアンサンブルもどんと来いな人材、そうそういらっしゃいません。

昨年夏前後は双方とも忙しかったので、温めて温めて、結局忙しいけど冬やすおんに強行した、の次第です。あんまり合わせの時間も取れなかったのですが、こんな感じで準備しました。

・年末は音合わせできず、譜面(まだ和訳書いてないよ)を開きながら「打ち合わせ」のみ。私から楽譜に絡むあらすじの紹介、けんいちろうさんから「ここ難しいけど必要?」の確認。その結果わかったことが、「ストーリー上華やかにしたいところはシロート目には豪華だけど割と素直な和音(なことも)」「何かヘンなことが起きている時は譜面上きれいでもすんごく弾きにくい音が書いてある(例:普段はおとなしいフェルディナンドがハチに刺されて大暴れ、おとなしいフェルディナンド(普段のテーマは単旋律)が闘牛場に入場する時のなんだか不器用な二重音のフレーズ。うたや合奏ではなんてことないハモりが、1人弾きだと難しい…)。 シーン別に要る音切っていい音を確認し、10分に収めるため(目分量)にカットしてもいい箇所のあたりを付け、練習(と和訳)がお正月の宿題となりました。

・やすおんのスペイン親善大使、MARIさんことまりぴーさんにご相談し、お手持ちのスペイン衣装&小道具の華やかなラインナップをお借りできることに…ありがとうございました! いやぁ、衣装でこんなにウケを取れることになるとは思ってませんでした、この時点では。

・年明けに2回ほど練習を。しゃべりとヴァイオリンの掛け合い具合など練習。お会いするたびにけんいちろうさんの演奏が流麗になって行って凄い!と感服。いやぁ、難しいモノを振ってしまったと申し訳なく思いつつ、絡めながら語るのは結構楽しく。噛んでも大丈夫な単語とストーリー上絶対に噛んじゃいけない単語があることを知る。練習後はお茶しながら打ち合わせ…てるはずが雑談のほうが多かった気が。絵本らしいストーリー、訳語にはずいぶんアドバイスもいただきました。

・狭いスタジオなら声は出るけどホールで足りる声量かさっぱりわからず。とはいえ大の大人が「歌ってる」ことは許容されても「大声でしゃべっている」状況が許される広い場所が意外とない!(例:うちのリビングや吹き抜け…響きはいいのに…)尋常ではない特殊な発声(?)はイナカな職場の屋外でこっそり練習。mixiのつぶやきで「人気のない駐車場で叫んでみたら遠くに人がいて慌ててクルマに逃げ込んだ」「牛を飼ってる現場で牛風にしゃべる練習をした。木を隠すなら森っす」など怪しい発言をしてたのがコレでした。

・で、最後の合わせをやすおん6日前の日曜日に終わらせたら…翌日から職場でのど風邪が大流行!自分も扁桃腺腫れて痛い…!!という状態に。早めに通院して強力な薬バックアップ体制を整え、土曜日まで声を出さずにひたすらイメージトレーニングでした。しゃべり、仕上げて置いてよかったです本当に。前日夜に急に花粉症らしき症状で鼻とのどが腫れだしてかなりヤバかったのですが、当日朝のステロイド投入でしのぐというギリギリっぷり。

・1年ぶりの東京建物八重洲ホール、「歩いて入場」にもムリのないコンパクトな奥行き、そして無理してしゃべらなくてもよく響くことを確認。練習してきた「大き目しゃべり」だと「むしろヴァイオリンよりうるさい」とのコメントをいただき、安心してのどを温存することに。叫び声も絹は裂けないけど木綿を裂く程度には出そうです…

奇跡の快演(or 怪演)、フェルディナンド顛末。_a0036057_23141743.jpgで、本番。嬉し恥ずかしこんな衣装で登場してしまいました(撮影 by ゆきぴさん@控室)

・主催者まみさんに団体名紹介をいただいてから、けんいちろうさんだけおもむろにヴァイオリンを弾きながら入場…が予想に反して(?)真面目に聴き入られている。さてこの空気はどうなるんだ、と思いつつ前奏曲の途中から入ったら…普段着ない衣装だけでなぜウケる(苦笑) 美味しいところ持ってっちゃってすみません。

・お話を始めると、皆さんよーく聴いてくださってるのがわかってとても嬉しく。お客様に出演者のお子さまが1人いらして反応をどきどきしながら見てたのですがちゃんと食いついていてくれたし、おかしなことが出てきたらちゃんと誰かからくすくす笑いが入る。してやったりでございます。
ドイツリートの「魔王」じゃありませんが、声色遣いで役を読み分けることにとらわれちゃ本来じゃない、とは知りつつ、どうしてもやりたい声色はしっかり演らせていただきました。…牛のお母さんの牛語トーク(爆)

・私が使った声色は「叫び声」を入れても片手で収まるはずですが、ヴァイオリンの技の多彩なこと!VとかΠとかが所どころ指定してあるのまでは何となく理解可能でしたが、++++とかooooとか同じ高さの音符2つ重ねとか、sul G やら sul tasto やらの記載が「あんなことしてあんな音になる」とはけんいちろうさんの解説聞くまで想像だにしてませんでした。観客の方が彼の手元まで注目できたか、状況的に(…って私の悪目立ちか)心配です。

・お客様に感想をきいて再認識したことですが、録音を聴いていると語りとヴァイオリンが交互に動くところ(フェルディナンドのテーマとか)の絡み方が実に心地よい。私の語りは基本前のめりなので(をい)、これはやはりヴァイオリン奏者のセンスの良さに救われているのではないかと。

・ハチに刺されて叫ぶまでは結構必死だったんですが、闘牛場入場あたりまで来たときに「あれ、もうここまで来ちゃった。こんなに楽しいステージは終わって欲しくないよ…」とふと思ってしまいました。歌の舞台ではもうなかなか感じることはない感覚なのですが、ここまで本番を楽しめるのは本当に幸せなことです。

・時間枠で申し込み、10分上限のこの舞台、録音からCDを作るときに1曲1ステージだから10分過ぎちゃったらどうしてもバレます。もし超過ペナルティが出てもそれは自分が受けましょうと開き直って特に巻かずに本番をしゃべりきったら、音の出だしから終わりまで9分50秒であったことが録音から判明。あまりのぴったりさ加減に思わず脱力しました。こんなところまで奇跡的な仕上がりに。

完全無事故、ではないけど、観客のみなさまに「語り付き音楽」のお話が伝わること、への影響はなかったと思っているので(訳文は考えるべきだったか…(反省))、いやはや、素晴らしい舞台に立たせていただきました。あのフェルディナンドが良くできていたとしたら、「作品のチカラ30%、楽器奏者の演奏力30%、勝手知ったハコの鳴りとお客様の一体感30%」のおかげだと本気で思っております。自分は好きにしゃべり倒しただけだしなー。


1時間半後のシャイン会では衣装と一緒に気持ちも切り換えて歌っていたはずが、「牛の人が歌ってると思うとおかしくて」という感想をいただいちゃった次第。うわぁぁ、ごめんなさいです。いつものシャインさん(今回はプチ金管っぽい16番)に加えて歌ったメンデルスゾーンのTrauergesangは歌詞から曲からとにかくロマン派っぽい曲で、我々としてはとても新鮮でございました。

今回のやすおんで残念だったのは、自分の仕込み(着替え等々)で引っ込んでる時間が長く、せっかくなのに聴けなかった演奏がいっぱいあること。あんまり演出に凝ってはいけませんねぇ。

本番後の高揚感のままにお酒を美味しく飲んだら(そしてZOOの皆さまと「冬の稲妻」なども歌ったら←)結局あの日をピークにまたのどの調子を崩しまして、結局深ーい咳とカスカスののどの風邪をまだ引きずってしまっております。

曲のネタストックがいっぱいある訳ではないですが、またいつかこんな場で語ることができたら幸せだなぁと思う次第です。あ、でもメインはうたのほうで参りますよ。
超長文、お付き合いいただきましてありがとうございました♪
by cantotanto | 2011-01-28 00:52 | 語り系&冗談クラシック
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