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復活するのだ…!
このたびの東北関東大震災(追記:東日本大震災の呼称になりました)では、多くの被災者の方々(亡くなられた方々も、生きて助かった方も)に心よりお見舞い申し上げます。
とても広い範囲に大きな爪痕を残した今回の地震、決して「遠くの出来事」ではなく、私の生活圏にも電気が復旧しなかったり水が出なかったり家に大きな損傷を受けたりと、さまざまな被害を受けた方がすぐ近くに沢山いらっしゃることも感じております。

昨年ほぼ20年ぶりにマーラーの「復活」を歌った際にエバロッティ~さんがおっしゃっていた、「阪神淡路大震災の焼け野原で復興を誓った時を思い出す曲」という話が、あらためてこの歌詞を噛みしめて強く実感されます。

最初は鳥の鳴き声も止んだ「無」の中からかすかに聞こえる声、時に強く、時に対立する2つの旋律として語られ、最後にはfffで生への復活を叫ぶマーラーの交響曲第2番「復活」の合唱+女声ソリの歌詞を、できるだけクロップシュトックが踏ませようとした韻を生かす配置でお送りします。拙訳(飛躍しすぎないつもりの意訳で)での対訳を徐々に付けてゆきます(→2011.3.19 完成 / 3.20一部修正しました)。

Aufersteh'n, ja aufersteh'n, wirst du,
mein Staub, nach kurzer Ruh!
Unsterblich Leben
wird der dich rief dir geben!

 復活する、そう、復活するのだ。
 塵となった我が肉体よ、あと少しだけ休んだ後には!
 お前に呼びかけた、不死の生命が
 お前に与えられるだろう!

Wieder aufzublüh'n wirst du gesät!
Der Herr der Ernte geht
und sammelt Garben
uns ein, die starben!

 再び花開くために、お前は種蒔かれるのだ!
 大鎌を携えた死神がやって来て、
 我ら死んだ者たちを刈り取り、
 束と集めて収穫するのだ!

O glaube, mein Herz, o glaube:
Es geht dir nichts verloren!
Dein ist was du gesehnt,
was du geliebt, was du gestritten!

 おお、信ぜよ、我が心よ、信じるのだ。
 お前は何も失ってはいないと!
 お前が見たもの、お前が愛したもの、
 お前が戦い守ろうとしたものは、お前のものなのだと!

O glaube:
Du wardst nicht umsonst geboren!
Hast nicht umsonst gelebt, gelitten!

 おお、信じるのだ。
 お前が生まれてきたこと、お前が生きてきたこと、
 お前が苦しんできたことは、無駄ではないのだと!

Was entstanden ist, das muß vergehen!
Was vergangen, auferstehen!
Hör' auf zu beben!
Bereite dich zu leben!

 生まれ出たものは、死なねばならぬ!
 死んだものは、復活するのだ!
 恐れおののくのは止めよ!
 生きてゆくために、準備をせよ!

O Schmerz! Du Alldurchdringer!
Dir bin ich entrungen!
O Tod! Du Allbezwinger!
Nun bist du bezwungen!

 おお、すべてを貫き穿つ「苦痛」よ!
 私はお前から救い出されたのだ!
 おお、すべてを征服する「死」よ!
 今やお前が征服されたのだ!

Mit Flügeln, die ich mir errungen,
in heißem Liebesstreben
werd' ich entschweben
zum Licht, zu dem kein Aug' gedrungen.

 自ら勝ち取った翼をひろげ、
 愛を求める激しい想いのうちに
 私はふわりと飛び立つだろう。
 まだ誰も見たことのない光に向けて。

Mit Flügeln, die ich mir errungen,
werd' ich entschweben!
Sterben werd' ich, um zu leben!

 自ら勝ち取った翼をひろげ、
 私はふわりと飛び立つだろう。
 私は生きてゆくために、死ぬのだ!

Aufersteh'n, ja aufersteh'n, wirst du,
mein Herz, in einem Nu!
Was du geschlagen,
zu Gott wird es dich tragen!

 復活する、そう、復活するのだ。
 我が心よ、ほんの一瞬のうちに!
 お前が打ち負かしたものが
 神の御許(みもと)へとお前を運ぶだろう!


「死」に打ち勝った後に「復活」して得られる「生」とは…キリスト教的な本来の歌詞は「現世での個人の死→神の御許での永遠の生の獲得」というストーリーなのですが、マーラーの意図はそれだけじゃないんじゃないかな、とこういう時にふと思うのです。生きた人たちが声をひそめて一つにこの詩を歌いだすのは、これは個人の死ではなく、死んでしまったかのような社会を「私」として語らせた「復興」の歌なんじゃないかと、思えてなりません。そこに立たれる一人ひとりが「我が心よ」と語りかけられています。

地震で、津波で、火災で、いろんなものが失われてしまった今の状況が"mein Staub"、ここから「失ってはいない」「無駄ではなかった」と信じ、身の回りの「死」に打ち勝って、新たに生きていく力を少しでも多くの方が得られますように、心よりお祈りいたします。


*2011.3.20追記
何と、この歌詞、クロップシュトックの詩は第2連までで、それ以降はマーラーの改作とのこと!確かに定型にはまらないのでまたマーラーさんがカットしたのだとばっかり思っていたのですが、そもそもマーラーが新たに書いた非定型詩、ということのようです。最後の最後に第1連を踏襲して感動的なラストを結んでいるのも、マーラーによる創作だったとは、驚きです。
by cantotanto | 2011-03-15 01:41 | 合唱曲
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