この曲をカテゴリ「合唱曲」に分類するのは忍びないのですが…。
私がこのブログを書く視線で分ければ、最大最高の「合唱曲」です。 マーラー最大の交響曲、第8番。 初演時に付けられた触れ込みタイトルが「千人の交響曲」。 実際に、初演舞台の上に1000人を超える人間が乗ったという、常軌を逸した規模の大曲です。 #もっとも、1000人越えには「350名の児童合唱団」が大きく寄与しているのですが。 特殊楽器を多用する5管?6管?編成(済みません、数え方わかりません)のオーケストラ、 8人のプロのソリスト(S×3(うち1人は出番ちょい。でも難しい)、A×2、T、Br、B) それなりの人数と技術(ここ重要)が求められる2重の混声合唱団(div.いっぱい)と、児童合唱団。 えっと、カネが掛かります。半端でなく。 昔々某ジュ○スで、「何十周年か、何十回かの記念(要は、キリ番)の時に演れませんかねぇ」と提案したら、某パトロン側に速攻で「ムリ。」と断言された、破格のコストです。 ここ半年近く騒いでおります通り、念願かなってちょうど1ヶ月後に合唱団の一員として舞台に乗れることとなっております。 本番の指揮者練や、ⅠⅡコラ練を通じて、徐々に形が見えてくる(不安もいっぱい見えてくるのですが…)中、これは曲のイメージをちゃんと持とう、と、手持ちDisk群を若干増強して、「聴き比べ」をやってみました。計5タイトル! 流石に長い曲を5つも聴いてるとどれがどれだかよくわからなくなっちゃう(おいこら)のであんまり深いことは掛けませんが、録音年代の古→新順に並べてみますね。 Gustav MAHLER (1860-1911) Symphony No.8 in Es Dur "Symphonie der Tausend" マーラー:交響曲第8番 ハーバー(ヘザー) ウィーン楽友協会合唱団 ウィーン国立歌劇場合唱団 ウィーン少年合唱団 ポップ(ルチア) オジェー(アーリーン) ワッツ(ヘレン) ミントン(イボンヌ) タルベラ(マルッティ) シャ / ユニバーサルクラシック 私が持ってるのは1990年の旧版: F40L-23151/2 London 1971年9月 ウイーン SOFIENSAALにて録音 STEREO アマゾンがつけてる情報じゃ全然足らんな。 ショルティ率いるシカゴ交響楽団が初のヨーロッパ遠征をしてウィーンの合唱団と録った録音です。 テノールがソリストも合唱も絶叫系だなぁ…と思ったら、若き日のルネ・コロさまではないですか!「贖罪の女」ということはグレートヒェン役がルチア・ポップさんですね。あと、子供子供してるけど存在感のある児童合唱団がウイーン少年合唱団!あら、すました音色だけじゃないんですね。 録音は旧いのですが、いい仕上がりになっています。金管の鳴りは流石シカゴ、という感じ(大好きです)なのですが、合唱が邪魔されてません。バランスいいミキシング具合だと思いますね。好きな録音です。願わくばシカゴ地元で自前合唱団の録音もあれば聴きたかった…。 マーラー:交響曲第8&10番 プライス(マーガレット) ツォイマー(ゲルティ) シュミット(トゥルデリーゼ) プライ(ヘルマン) ダム(ヨセ・ファン) ウィーン楽友協会合唱団 ブレーゲン(ジュディス) バルツァ(アグネス) リーゲ / ユニバーサルクラシック 私が持ってるのは1991年の旧版のこちら: 435 102-2(435 103-2&104-2) DG 1975年ザルツブルク音楽祭 ライヴ録音 ADD こちらはバーンスタイン-ウィーンフィル。アルトでバルツァさんとか、バリトン:ヘルマン・プライ、バス:ホセ・ヴァン・ダムさんとかが有名どころでしょうか(個人的主観)。 一番最初に持っていたディスクなので印象を語るのが難しいのですが、ライヴ録音だけあって全体のバランスは変にいじられず、好きな録音です。常に10番とのカップリングで売られ、決して8番1枚にならないように、割とゆったりめのテンポ取りかな。 マーラー:交響曲第8番 小澤征爾 ロビンソン(フェイ) ブレゲン(ジュディス) サッソン(デボラ) クイヴァー(フローレンス) マイヤース(ローナ) リーゲル(ケネス) ラクソン(ベンジャミン) ハウエル(グウィン) タング / ユニバーサルクラシック 私が持ってるのは?年の旧版(2枚組): 410 607-2 PHILIPS 1980年10-11月 ボストン シンフォニーホールにて録音 DDD こちらは若き日の小澤征爾がホームベースのボストンで録ったもの。今は1枚モノ1000円での販売ですか!こりゃ買いですわ。 実に生き生きとした、メリハリのある録音です。逆を言うと、よく聴けば合唱あたりにすこぉし市民合唱団的リアル感がまぶされているのがわかっちゃうのですが、この曲はこのくらいが丁度いいのだと、個人的には思っています。ラテン語の読みはイタリア式寄りですね。Accendeを「アッチェンデ」と発音しています。オケの楽器は全体的に抑え目で録音されてる、のかなぁ…。 マーラー:交響曲第8番 ベルティーニ(ガリー) 東京都交響楽団 中村智子 澤畑恵美 半田美和子 手嶋眞佐子 竹本節子 福井敬 福島明也 長谷川顕 / フォンテック FOCD9216 2004年5月20日 横浜 みなとみらいホール ライヴ録音 SACDとのハイブリッド版 たった1年前の演奏会のはずなのに、マエストロ&合唱指揮者はもうこの世にいらっしゃいません…合掌。名演なだけに残念。 演奏と録音は秀逸(SACD再生環境がないため、あくまでCDとしての評価)。オケの、特に特殊楽器の音に関しては実に見事に入っていまして、こんな静かなところでオルガン最低音域の持続音が鳴ってたのか、とか、小物パーカッションの音とかが実に鮮明に入っています。一方で、声楽系(ソリスト陣&合唱s)はレベル抑え目に聴こえますね。ライヴでの音量優先、だったのでしょうか。「千人」という作品をCDで聴かせるためには、少々物足りない感じがします。 物足りない、と言えば、日本人合唱団、出来はいいけれどコトバが立ってないなぁ。特に子音が足りない。ちなみに、第1部のAccendeは「アッツェンデ」、ドイツ読みのようです。あと、(恐らく)女の子中心と思われる児童合唱団、声量が足りないなぁ…。日本で今歌える男の子の(いる)合唱団を作るのがいかに難しいかはわかるんですけどね(本場英国でだって苦労するらしい…)。 実は第2部「神秘の合唱」で、ソプラノがppで高音に上がるところ、微妙に(1/8音位か)ピッチが低かったけどすぐに修正&皆揃っている。いいなぁ、こういう調整、今回の合唱団じゃ無理だなぁ…たぶん。 マーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」 ラトル(サイモン) バーミンガム市交響楽団 バーミンガム市合唱団 マーラー / 東芝EMI 私が持っているのは同じく2005年の輸入版: 7243 5 57945 2 9 EMI CLASSICS 2004年6月 バーミンガム シンフォニーホール ライヴ録音 DDD これ、ベルリンフィル就任から注目度が上がったラトルが、古巣バーミンガムで録った凱旋ライヴ録音、なのですが…クセモノです。1枚に収まるとおり割と速めのメリハリのある心地よいテンポ、ですが、録音状況が「千人」じゃなくて「何人?」って感じ…かなぁ。 合唱が非常にイギリス合唱っぽく、透き通った音色。児童合唱団もイギリスのそれな雰囲気、混声合唱の女声もかなり児童寄りの幼めな声。あまりの透き通り具合に、まるで30数人の合唱団が歌っているように聴こえます。 オケも5管編成とかには全然聴こえない。ソリストという生き物がユニゾンで歌ったら絶対にこうはならないはず、と言う感じのぴったり合い方です。ヴァイオリンソロとかもあまりにきれいに大きく通りすぎ。 ラトルのここのところの注目盤に共通することなのですが、録音側のエンジニアが頑張りすぎちゃって、雑音という雑音を全部取り去っちゃったかのような、美しいけどリアル感に欠ける(ぱっと聴き臨場感が増してそうなんだけど、冷静に考えるとあり得ない音)仕上がりになってるような気がします。イギリス人指揮者なラトル自身の趣味なのかしらん…。どうしても、「千人」という曲の本来の姿からは違う音として焼かれているように思えてなりません。ライヴ録音とは思えない静けさの中に美しいハーモニーが浮かび上がって来ます。イギリス合唱曲としては満点なような気もしますねぇ…。 そうそう、ラテン語Accendeは「アッセンデ」と発音されていました。イギリス式の発音を採ると、こうなるのかしらん…(勉強不足)。 いかがでしょうか? コストパフォーマンスだと小澤-ボストン(現行品)、 ライヴ感と楽器の音を楽しむならベルティーニ-都響、 マーラーらしさを楽しめるテンポのメリハリなら、録音にクセがあるけどラトル-バーミンガム、かなぁ…。
by cantotanto
| 2005-08-03 02:20
| 合唱曲
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